Z.comへの移転作業を本格的に始める(後編)

2017年02月28日Z LOG, 井上研一先生コラム

Z.comへの移転作業を本格的に始める(前編)はこちら

 

VCCWとWordMoveを使用した移行にチャレンジ!

結末から先に言っておきますが、Z.comのWordPressサーバーではSSH機能が提供されていないため、この方法は実は上手く行きません。
しかし、Z.comのSFTP機能を知るにはうってつけの内容でもあるのでそのままお届けします。
(言い訳?は記事の終わりに・・・)

 

VCCWのインストールとWordMoveを使った移行元とローカルの同期については、本稿の対象外となるので触れません。そこまでは作業が進んだという前提で、Z.comのWordPressサーバーでWordMoveが使えるかという観点で、稿を進めることにしましょう。
WordMoveで本番サーバーの設定を行うのは、Movefileというファイルを編集します。VCCWでは、/vagrant/Movefile というファイルがそれです。

zlog4_5図 5 VCCWでのMovefile

 

Movefileで編集する必要のある箇所は下記のとおりです。

●本番(ステージング)サーバーのURL
●本番(ステージング)サーバー上のWordPressが配置されているパス
●データベースの接続に関する情報
●SSHまたはFTPの接続に関する情報

本番サーバーのURLについては、今回はZ.comのWordPressサーバーの特徴の1つであるステージング環境を使うので、ステージングのWordPressのURLを指定します。

それ以外の情報は、SFTPを使ってZ.comのステージング環境にログインしてみないと分からないようです。

 

SFTPアカウントの作成

SFTPを使う前に、Z.comの管理画面からSFTPアカウントを作成する必要があります。
Z.comのWordPressサーバーでは、1つのサーバーで複数のWordPressサイトを開設することができますが、SFTPアカウントは、サーバー内のすべてのサイトにアクセスできるSFTPマスターアカウントと、特定のサイトのみアクセスできるSFTPアカウントの2種類があります。

zlog4_6図 6 SFTPマスターアカウント

 

さらに、SFTPアカウントでは、本番環境かステージング環境の選択が必要で、両方にアクセスできるアカウントは作成できないようです。

zlog4_7図 7 SFTPアカウント

 

SFTPマスターアカウントではすべてのサイトでSFTPのログインができるので細心の注意が必要になります。普段の作業はサイトごとのSFTPアカウントで行うのが良いでしょう。ステージング環境にしか接続できないSFTPアカウントでは、多少の操作ミスがあったとしても影響が出るのはステージング環境だけなので、さらに安心です。

zlog4_8図 8 ステージング環境のSFTPアカウントを作成

 

今回はステージング環境用のSFTPアカウントを作成しました。ポート番号はデフォルトの22ではないようです。この辺からも、Z.comがセキュリティ面の考慮が行き届いたサービスであることが分かりますね。

 

ステージング環境にSFTP接続してみる

Mac用のSFTPクライアントであるCyberduckを使ってステージング環境にログインしてみました。

zlog4_9図 9 ステージング環境のファイル構成

 

ログインしてみると、archiveディレクトリとwordpressディレクトリがあることが分かります。これでWordPressが配置されているディレクトリが分かりました。また、archiveディレクトリにはバックアップが保存されるものと思います。

zlog4_10図 10 wp-config.php

 

また、wp-config.phpを確認すると、データベースの接続情報も分かります。

 

いざ、WordMove!

Movefileをひととおり設定して、いざWordMoveのPUSHを試してみたところ・・・。

zlog4_11図 11 悲しきエラー。

 

エラー。エラー。エラー・・・。

やっぱり・・・。

 

いや、ここまで文章を引きずっておいてエラーかよ!と怒らないでください。謝ります。すいません。
実は、こうなることはなんとなく想定していたのです。WordMoveはSSHかFTPでファイルの転送を行います。SFTPというのはSSHをベースにした技術です。SSHはセキュアシェルと言われる仕組みで、サーバーを操作するシェル(いわゆる黒い画面)を外部から、安全に使うための技術です。SFTPは、そのSSHの仕組みの上で安全にファイルを転送することができます。

Z.comのWordPressサーバーはそもそもSSH機能を提供していないのですが、ファイル転送はSFTPを使って行うため、WordMove側の実装次第では動くのでは?と淡い期待を抱いて試してみたというのが、今回の記事の真相です。

でも、その淡い期待は打ち砕かれしまった・・・

 

SSH機能がないはやむを得ないが・・・

SSH機能が提供されていないというのは分かっていたことだし、SSHの仕組み自体は安全なのですがそれを使うユーザーがみんな安全な使い方だけをするとは限りません。また、余計な負荷をかけるような使い方をされてしまうと、Z.comのWordPressサーバーの特徴である高速さを損なうことにもなりかねません。そのため、SSH機能がないことはやむを得ないと思います。

ただ、今回のような移行のためという以外でも、WordPressサイトの開発でVCCWやWordMoveを使うというのは一般的になっていると思いますし、Z.comさんにもぜひ、SSH機能の解禁を検討いただければと思う次第です。最低限、WordMoveが使えるレベルで良いので・・・。(実のことをいうと、あとMySQLの配置もWordMoveの使用にはちょっと気にかかるところ。)

 

次回こそ移転を完了させる!

ということで、今回の記事はちょっと(作業的に)スッキリしない結末となってしまいました。しかし、これもリアルな作業記録ということで泥臭い記事でもOK!と勝手に解釈し、ありのままの姿をさらけ出すことにしました。それに、SFTPやサーバー環境のひととおりについても触れることができたし、御の字ですよね!

と、言い訳はさておき、次回こそ移転を完了させます!
先ほどご紹介した3つの方法のうち、「(2)データベースとメディアファイルを手動で移行する」で作業を進めたいと思います。WordMoveを使う方法より手動でやる部分が多いので、少し面倒かなという気はしますが、Z.comのWordPressサーバーでも仕様的な支障はなく、間違いなく完了させられる方法です。

ということで、次回をお楽しみに!

 

inoue井上研一(いのうえ けんいち)

東京都中野区に住むITコーディネータ、ITエンジニア。
1979年福岡県北九州市生まれ。

1996年頃よりWebサイトの構築、アプリ開発を開始し、多くの雑誌が掲載。国内中堅SI会社やコンサルティング会社等を経て、2013年にアルティザンエッジ合同会社を立ち上げ代表社員・CEOに就任。 技術そのものよりも、技術が社会にもたらす影響に興味を持ち、ITとビジネスが交わるところで活動中。クライアント企業のプロジェクトに参画するほか、イベント登壇や執筆活動にも積極的に取り組み、ブログにもいろいろ書き連ねています。
2013年より超初心者専門ITスクール「TECH GARDEN SCHOOL」で講師を務めるほか、最近はこどもたちにプログラミングを教える活動も始めました。 2016年10月に書籍「初めてのWatson APIの用例と実践プログラミング」をリックテレコムより刊行!

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